統計に傾倒―密集都市東京004―
東京都の感染拡大が止まりません。今日(5月1日)のニュースで、これまで23区内にしかなかった軽症患者滞在用ホテルが、23区以外にも設置されたと報道されました。東京都23区ってどんな区があるのでしょう。また、23区以外とは?よく知られているのは、八丈島とか小笠原諸島が、東京都であることです。東京のナンバープレートの車が走っているのでしょうね。
では、東京都内の自治体を概観してみましょう。
最初に使用した東京都の最新の推計人口で確認します。ここでは、現在の最新データである2020年3月1日の推計人口を利用しましょう。
都の下には、区部、市部、町村部があり、町村部は、郡部と島部に分けられるようです。まとめの表には、区部、市部、郡部、島部の4区分の小計値が掲載され、合計13,951,791人、そのうち、区部9,656,295人、市部4,214,303人、郡部56,265人、島部24,928人となります。
区部の23区を確認してみましょう。
千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区があります。東京圏の人には当たり前かもしれませんが、それ以外の人にとっては馴染みのない区名があると思います。
一方、東京に馴染みがなくても耳にする区名があります。大手企業の製品に付されている住所で目にする区があります。私は、公共放送や放送会社の住所が耳になじんでいたりします。例えば、渋谷区神南(NHK)、港区赤坂(TBS)とか。いまでは放送局にメッセージを送るときには、ウェブが使用されることがほとんどだと思うのですが、インターネットが普及するまでは、郵便はがきで送ることが多かったので、テレビ番組で住所が読まれることが多かったと思います。若い世代の方は、きっとURLの方が聞き馴染みがあるかもしれません。
市部を確認してみましょう。
八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市、多摩市、稲城市、羽村市、あきる野市、西東京市があります。
私たちの世代の多くは東村山市の名前をかなり認識していると思います。小学生の時、亡くなった志村けんの東村山音頭一丁目が出たかどうかが、翌週の学校での重要な話題でした。追悼番組で久々に見て、初めて一丁目を見たときの衝撃を思い出しました。志村けんによる東村山音頭は、進行次第では一丁目まで行かなかったのです。志村けんが初めて「8時だよ全員集合」に出たときのこともうっすら覚えている世代ですので。でも、すみません。東村山市に行ったことはありません。
福生市って読めます?「ふっさ」は、実際に行くことになって、読み方と場所を知りました。米軍ハウスを見に行きました。たしか、東京にやってきた(上京という言葉が嫌いです)福山雅治が最初に住んだのが福生だったと記憶しているのですが、違ったかな。福山雅治は、米軍のラジオ放送FEN(極東放送)に音楽的な影響を受けたと、何かで読んだ記憶があるのですが、どうだったか。
青梅市も、マラソンが好きな人なら知っているかな。いい日本酒の蔵元があります。風景画が美しい日本画家の美術館が奥山の峡谷の川沿いにあって、ずいぶん前に訪れたことがあります。読みは「おうめ」です。日本画家は川合玉堂です。
子供の時からの友人が大学に進学して国分寺市に住んだので、学生時代に訪ねたことがあります。やっぱり、武蔵国の国分寺があったのでしょうか。そうそう、東京都と埼玉県は、旧の国が武蔵です。日野市は日野トラックの日野自動車の本社があったはず。
職業柄、学術学会に行きますので、関東方面の大学に行く機会も多いです。東京の大学は、武蔵野台地や多摩丘陵に多いです。郊外移転したり、はじめから郊外に開学した場合が少なくないことでしょう。その住所や宿泊するホテルの住所は東京都の市部ですね。
郡部に移りましょう。とその前に、「郡」ってなんでしょう?古語では「こおり」と呼んだはずですが、古代に由来する行政区分では、国の下に郡があり、その下に、町・村・里・郷の区分があったとされます。出典は大辞林です。つまり、郡はすべての地域を区分するまとまりであったわけです。これは、アメリカ合衆国で、市町村というコミュニティとは別に、州Stateの下に郡Countyがあるのと同じように感じます。これもきちんと確認する必要はあります。
江戸時代には、都市的な場所に町奉行があった一方で、農村部には郡奉行がありました。江戸時代に「郡」が農村的な場所を意味する言葉となったのかどうかは、確認が必要です。
1889年に市制町村制が施行されると、現代の制度につながる市町村が設けられました。市には市役所、町村には役場が設置されました。これらが道府県の下に、ということではありません。町村の上には、郡役所があったのです。市役所と郡役所が同じランクで、「役所」です。統治システム的には、役所は道府県庁と直接やりとりができますが、町村は郡役所を介して道府県庁とやりとりするしかなかったのです。市になるためには、当時2万5千人を超えていて、行政機関や学校の整備、経済的中心性が条件とされていました。しかし、業務の効率化のために、1926年に郡役所は廃止されました。
で、東京都の郡部は、瑞穂町、日の出町、檜原村、奥多摩町の4町村です。研究の関心から、檜原村と奥多摩町は耳にしたことがありますが、瑞穂町、日の出町は初めて耳にしました。場所どこだろう?
続いて、島部。まず、4支庁に分けられるのですね。大島支庁、三宅支庁、八丈支庁、小笠原支庁です。北海道出身の私には、石狩支庁とか空知支庁とかいうように、支庁という響きは耳になじんでいます(いまは振興局に名称変更されています)。しかし、そうでない限りはなかなか馴染みがないと思うのですが、東京都の島部にも支庁がありましたね。
4支庁の下に町村があります。大島支庁に大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅支庁に三宅村、御蔵島村、八丈支庁に八丈町、青ヶ島村、小笠原支庁に小笠原村です。
東京都の自治体、ややこしいですね。法則性があるようでなく、気を遣っている、慮っているようにさえも見えます。
2020年3月1日の推計人口の内訳をもう一度確認しましょう。東京都の合計13,951,791人、そのうち、区部9,656,295人、市部4,214,303人、郡部56,265人、島部24,928人です。数年前、あきる野市で農村を見学しましたが、市部が全て都市的な場所ということはありません。とはいえ、市部では都市的な場所に住んでいる人口の方が、大半を占めていることでしょう。郡部、島部からなる町村部は約8.1万人です。東京都は、都市部ともいえる地域に住む住民が、自治体としての東京都における意思決定上の主役といえるわけです。
コロナウイルスの軽症患者が滞在するホテルが、昨日までは東京区部に2軒あるだけだったそうですが、今日市部に1軒が確保され、区部にも墨田区に1軒設置されたと、ニュースで聞きました。四つの区市郡島部の人口比率を見たときに、どうでしょうか、比例しているように見えなくはないですよね。でも、提供してくれたホテルがあっただけかもしれません。とはいえ、人口比率的に、市部にも施設は必要だったことは間違いありません。
都道府県庁には統計部門があり、人口調査はもちろんのこと、各部署でとられた様々な統計が凝縮され、統計書、統計年鑑にまとめられ、刊行されています。インターネットが広く普及した現在では、おそらく全ての都道府県によって、ホームページに掲載されているはずでしょう。 検索サイトにおいて、東京都 統計 で検索をかけると、東京都統計年鑑のページが見つかります。最新版の「平成29年」→「人口・世帯」→「地域別人口」の順にクリックしましょう。東京都統計年鑑には、区部、市部、郡部、島部の自治体について、現在の区市町村域で、1920~2015年の国勢調査人口、2016年、2017年10月1日の推計人口が掲載されています。これはすごい!
ということで、次回は、東京都の自治体の人口推移に注目したいと思います。
さて、郡について紹介しました。現代でも、住所や行政区分で郡の地名が残っています。大阪府豊能郡能勢町とか、兵庫県加古郡稲美町のように、町村がほとんどなくなった現代の大都市圏の府県でも、正式に住所を記すときには、大阪府能勢町、兵庫県稲美町と書きませんよね。郡を記すのです。その理由はいつか調べてみたい気がします。
アメリカコロラド州を訪れたとき、いくつかのカウンティにまたがるようにして「デンバー市」が存在していると聞いて、地図にもそうあって、びっくりしました。州の税金は郡役所に納税に行く必要があるとも教えてもらい、郡役所があることにも驚きました(日本人の先生から日本語でですよ)。ハワイ州ホノルルの正式名は、City & County of Honolulu、つまり、市役所と郡役所を兼ねている、と称しているわけですね。アメリカの自治体のあり方は、日本とは異なるのです。
昨夜でしたが、たまたまスイッチが入って放送されていたNHK FMの番組で、東京一極集中を客観視、否、揶揄したかのような朗読劇が放送されていたのを耳にしました。ネットで検索してみると、青春アドベンチャー『00-03 都より愛をこめて』(全10回)という番組でした。あらすじには、「時は20XX年。21世紀に入り加速した東京への人と富の一極集中。一方で、対極にある地方の破綻。」と始まり、「受けて立つ東京は、遷都論議をうやむやにしたい。そのために影の組織が動き始めた…。」とあります※1。なんじゃそりゃ。
地理学という研究分野は不平等に注目します。不平等にことさら敏感に反応します。『不平等の地理学』という本もあったくらいです。D.M.スミス著。学生時代に読めといわれましたが、読まなかった・・・。それはともかく(汗)、日本の経済的政治的不平等をあからさまにするかのようなラジオ番組を放送するとは、NHK恐るべし。思わず反応しました。聴きたい!でも、しばらくは、ゆっくりラジオを聞く暇がないですなあ(涙)。
※1 NHK FM オーディオドラマ『00-03 都より愛をこめて』